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東京高等裁判所 昭和62年(ネ)1918号 判決 1988年3月30日

控訴人(附帯被控訴人) 株式会社営和建築設計事務所

右代表者代表取締役 赤川猛

右訴訟代理人弁護士 鈴木圭一郎

同 鈴木和雄

被控訴人(附帯控訴人) セントラル東銀座管理組合理事長 川島達人

右訴訟代理人弁護士 佐藤正八

同 本橋光一郎

主文

一  控訴人の控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人が原判決添付別紙物件目録二記載の駐車場に関しセントラル東銀座管理組合に対し納入すべき管理費は昭和六〇年四月以降毎月額金九万〇七一二円、同じく修繕積立金は同月以降毎月額金九〇七一円であることを確認する。

2  控訴人は、被控訴人に対し、金二二五万九六八三円及び内金別表認容金額欄記載の各金員に対する同表起算日欄記載の日以降完済までそれぞれ年一八パーセントの割合による金員並びに昭和六二年一一月一日から昭和六三年二月三日まで一か月金九万九七八三円の割合による金員を支払え。

3  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一・第二審(附帯控訴費用を含む。)を通じてこれを一〇分し、その七を控訴人のその三を被控訴人の各負担とする。

三  この判決の第一項2は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  被控訴人の附帯控訴を棄却する。

二  被控訴人

1  控訴人の本件控訴を棄却する。

2  附帯控訴として、原判決主文第二項を次のとおり変更する。

控訴人は、被控訴人に対し金二九三万一六七〇円及び内金別表請求金額欄記載の金員に対する同表記算日欄記載の日以降完済までそれぞれ年一八パーセントの割合による金員並びに昭和六二年一一月一日以降昭和六三年二月三日(控訴審口頭弁論終結の日)まで一か月金一二万一四六〇円の割合による金員を支払え。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被控訴人は、原判決添付別紙物件目録一記載の建物の区分所有者全員を組合員とするセントラル東銀座管理組合(以下、管理組合という。)の理事長であり、控訴人は右建物の一部である同物件目録二記載の建物、すなわち控訴人の専用部分である立体駐車場(以下本件駐車場という。)の区分所有者である。

2  管理組合では、昭和五九年一〇月三一日の管理組合臨時総会の議決により、規約第二三条第二項を改正して立体駐車場の管理費等に関しては総会において別に定める金額とする旨定め、かつ具体的金額については理事会で決定すべき旨を定めた。そこで、昭和六〇年二月二一日の管理組合理事会において、本件駐車場の区分所有者の控訴人が管理組合に対し納入すべき管理費は月額金一一万〇三六〇円(ゴンドラ部分ついては、坪当たり単価に階数及び〇・八を乗ずる算式で計算)、修繕積立金月額金一万一一〇〇円、合計金一二万一四六〇円と決定した。

なお、未払管理費については、管理組合規約第五六条に、組合員は管理費・修繕積立金の当月分を前月二七日限り管理組合に対し支払うべく、遅滞金については年一八パーセントの割合による遅滞損害金を付加して支払う旨の定めがある。

3  ところが、控訴人は従前の管理費月額金二万四四四〇円(ゴンドラ部分についても坪当たり単価のみで計算)、修繕積立金月額二四五〇円のみ支払い、その余の金九万四五七〇円の支払をしない。

よって、被控訴人は、控訴人に対し、本件駐車場についての昭和六〇年四月以降の管理費が月額金一一万〇三六〇円、同じく修繕積立金が一万一一〇〇円合計金一二万一四六〇円であることの確認を求め、かつ、昭和六〇年四月一日以降昭和六二年一〇月までの未払金(三一ヶ月分)合計金二九三万一六七〇円及び内金別表請求金額欄記載の各月分の管理費等差額金各金九万四五七〇円及びこれに対する同表記載の各記算日(約定の支払期日の翌日)から完済に至るまで約定の年一八パーセントの割合による遅延損害金並びに昭和六二年一一月一日から昭和六三年二月三日(控訴審の口頭弁論終結の日)まで一ヶ月金一二万一四六〇円の割合による金員の支払を求める(附帯控訴として、管理費等一ヶ月金一二万一四六〇円の割合による金員請求を昭和六二年二月三日から昭和六三年二月三日までに、又、遅滞損害金の利率を年五パーセントから年一八パーセントに、その起算日を各約定期日の翌日からにいずれも当審で拡張して請求する。)。

二  請求原因に対する認容

請求原因事実は認める。

三  抗弁

本件駐車場の管理費等に関しては、総会において別に定める金額とする旨の規約の設定は、本件駐車場の区分所有者の控訴人の権利に特別の影響を及ぼすべきときに該当し、その承諾を得なければならないところ(管理組合規約第四四条第六項前段。)、控訴人は承諾していない。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は認める。

五  再抗弁

1  本件規約の変更が控訴人の権利に特別の影響を及ぼすときであっても、控訴人は正当な理由がなければこれを拒否してはならないことになっている(管理組合規約第四四条第六項後段)。

2  本件においては、請求原因2記載の規約の改正及び管理費等の決定は、本件駐車場の構造、各階層の利用面積等に照らして正当な事由がある。

六  再抗弁に対する認容

再抗弁事実1を認め、2を否認する。

第三証拠関係《省略》

理由

一  請求原因事実、抗弁事実及び再抗弁事実1については、いずれも当事者間に争いがない。

再抗弁事実2について判断する。

《証拠省略》を総合すると、次の事実が認められる。

原判決添付別紙物件目録一記載の建物の一部である控訴人が使用する本件駐車場は、ゴンドラ部分、すなわち、一階から一〇階まで吹抜けになっており、共用部分である二面の外壁一〇階分を専用し、ゴンドラ式により一〇階層分を立体駐車場として高層利用する各階層の駐車収容部分一二・二八坪と、ターンテーブル部分、すなわち、車を回転させる一階の一二・一二坪からなり、管理組合が公租公課を負担する車路七〇・五六平方メートルを専用使用している。そして、同目録一記載の建物の管理費は、管理人人件費、公租公課、共用設備の保守維持費及び運転費、備品費、通信費その他の事務費、共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料、経常的な補修費、清掃費、消毒費および塵芥処理費、管理委託費、管理組合運営費、その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用に充当することとされている。以上のとおり認められる。

以上のような事実関係の下では、管理費等に関して、立体駐車場の部分とその他の部分とを別異に取扱うべきことは当然であり、したがって本件規約の変更は正当な事由があるから控訴人は承諾を拒否することはできないというべきである。しかしながら、右改正が有効であるからといって、立体駐車場の管理費等を総会又は総会から授権された理事会が自由かつ無制限に決定しうると解するべきではない。具体的な金額を決定する総会等の決議を控訴人が承諾しない場合は、右決議についても具体的な正当事由が存しなければならないというべきである。そこで、この点について検討するに、前掲証拠によれば、昭和六〇年二月二一日の管理組合理事会で決定された管理費等は、控訴人の専用部分を一〇階層分の八〇パーセントと査定しているものであるところ、前認定の諸事実に照らし、一階部分を一〇〇パーセントとし、それ以上の九階層部分をいずれも一階部分の六〇パーセントと認めるのを相当とする。これによれば、管理費等の額については、ゴンドラ部分の管理費は金七万八五九二円(一〇〇〇円(坪当たり単価)×一二・二八(坪)×(1+0.6×9)、ターンテーブル部分の管理費は金一万二一二〇円(一〇〇〇円(坪当たり単価)×一二・一二(坪))、修繕積立金は金九〇七一円(金七万八五九二円と金一万二一二〇円の合計金九万〇七一二円×〇・一)となり、以上合計金九万九七八三円と認めるのを相当とする。被控訴人の再抗弁は右の限度で理由がある。

なお、《証拠省略》中には、右管理費の額は控訴人が本件マンションの前所有者(丸紅株式会社)から本件駐車場を購入した当時の管理費に比し不当に高額である旨の供述部分がある。しかし、《証拠省略》によると、控訴人は、本件マンション建設事業者であった日本保証マンション株式会社から本件駐車場の敷地部分を購入したものであるところ、同社は昭和五五年九月二四日本件マンション建設についての建築確認を受けた後、基礎工事着工時点で丸紅株式会社にこれを譲渡し、同社は昭和五七年一月から三月中に本件マンションを竣工させ、控訴人に本件駐車場を、又、他のマンション購入希望者にそれ以外の部分をそれぞれ販売したが、控訴人代表者赤川猛のいう管理費は、丸紅株式会社との間で設定され、そもそも他のマンション購入者らの入居以前に、これらとは別に、吹抜けの一階平屋並みの基準で定められた極めて低額のものであったことが認められ、以上の事実にその設定後の経過年数、本件駐車場と他の部分との比率等を勘案すると、被控訴人主張の決議のなされた昭和六〇年二月当時においては、その合理性を失い、適正額に改定すべき状況にあったものであるといわなければならない。

してみると、控訴人が従来から管理費月額金二万四四四〇円及び修繕積立金二四五〇円、以上合計金二万六八九〇円しか支払っていないことについては当事者間に争いがないから、控訴人は昭和六〇年四月以降前記金九万九七八三円から右金二万六八九〇円を差し引いた残金七万二八九三円の支払義務があるといわなければならない。ゆえに、昭和六〇年四月以降の管理費は月額金九万〇七一二円、同じく修繕積立金は月額金九〇七一円であり、同月一日から昭和六二年一〇月までの未払金は合計金二二五万九六八三円(右管理費と修繕積立金の合計金九万九七八三円から控訴人の従前の支払分金二万六八九〇円を差し引いた金七万二八九三円の三一ヶ月分)であり、又、昭和六二年一一月一日から昭和六三年二月三日(当審口頭弁論終結の日)までの支払分は月額金九万九七八三円である。そして、滞納分の支払金額及びこれに対する約定遅延損害金支払額の明細は、別表認容金額欄及び起算日欄記載のとおりである。

以上によれば、被控訴人の各請求(附帯控訴による請求拡張部分を含む。)は前記の限度で理由があるから認容すべきであるが、その余は理由がなく、又控訴人の本件控訴も右の限度で理由があるがその余は理由がない。

二  以上の理由により、理由と結論において一部異なる原判決を変更すべきものとし、仮執行宣言につき民訴法一九六条を訴訟費用の負担につき同法九六条九二条八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 武藤春光 裁判官 菅本宣太郎 秋山賢三)

<以下省略>

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